夜間飛行制限の変更

必要性

政府は、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生に向け、GDP600兆円達成に向けた成長戦略の取り組みを加速しています。

こうした中、人口減少・少子高齢化を迎える我が国において、今後、経済発展が著しいアジアの成長を取り込んでいくことは、成長戦略の早期実施を加速するうえで必要不可欠となっています。

政府目標 戦後最大の名目GDP600兆円の実現 (2015年の名目GDP:500兆円)

明日の日本を支える観光ビジョン 主要施策

GDP600兆円達成に向け、政府は、アジアの成長を取り込むべく、訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人、訪日外国人旅行消費額を2020年に8兆円とする新たな目標を掲げ、観光を我が国の基幹産業へと成長させるべく、受入環境の整備を積極的に推進しています。

訪日外国人旅行者数 2020年:4,000万人 2030年:6,000万人 / 訪日外国人消費額 2020年:8兆円 2030年:15兆円
訪日外国人旅行者数 2020年:4,000万人 2030年:6,000万人 / 訪日外国人消費額 2020年:8兆円 2030年:15兆円

成田空港に期待される役割

我が国の表玄関である成田空港として、政府が掲げる目標実現に大きく貢献していくためにも、成田空港の更なる機能強化が強く求められています。

日本人出国者数と訪日外国人数の推移

これまでは成田空港は日本人出国者数が訪日外国人数よりも多かったものの、2013年以降訪日外国人数が急増。

日本人中心の朝出発、夜到着という旅行ニーズから、訪日外国人にとって利便性の高い早朝到着、深夜出発という旅行ニーズが大幅に拡大。

このため、今後更に増大していく訪日外国人のニーズに応えていくためには、より利便性の高いダイヤ設定が必要となるが、現状の夜間飛行制限では困難な状況。

成田空港におけるLCCのさらなる成長

2012年のLCC就航以降、LCCのシェアは大幅に増加してきたが、夜間発着枠が現在は満杯となっており、今後の更なる成長は困難な状況。

運航可能時間の延長により、LCCが成田空港に夜間に到着する、あるいは成田と海外を夜間に一往復する等のダイヤ設定が可能となれば、旅行者にとっては、日本への滞在時間拡大やLCCによる内際接続の利便性の向上や更なる需要の喚起につながるため、成田空港の更なる拠点化が期待されています。

航空貨物輸送

成田空港周辺には国際物流施設が展開・集積しており、「一大国際物流拠点」として機能していることが成田空港の強みであり、政府が掲げる農林水産物輸出額1兆円の目標達成に向けても今後もフルに活用してくことが不可欠です。

しかしながら、現状の夜間飛行制限の下では、貨物輸送の速達性を高め、更なる航空輸送需要を取り込んでいくことが困難な状況にあります。

考え方

将来においても航空需要に応じたダイヤ設定を可能とするため、航空会社へのヒアリング等に基づき、50万回時における深夜早朝時間帯のフライトのケーススタディを行いました。

その結果、他空港との競争に劣後することなく成田空港の更なる機能強化を図っていくためには、 4:00~2:00を運航時間とすることが理想的であることが確認されましたが、成田空港は内陸空港であることから航空ニーズの大部分に応えることが可能な運航時間5:00~1:00を2016年9月の四者協議会で提案させていただきました。

しかしながら、住民説明会等において地域の皆様から大変厳しいご意見を頂き、千葉県知事及び成田空港圏自治体連絡協議会から国土交通大臣と当社に対し2度にわたって見直しのご要請・ご要望がなされたことを受け、2018年3月の四者協議会において、運航時間を5:00~0:30とし、飛行経路下の静穏時間を7時間確保できる案で最終的に合意されました。

なお、夜間飛行制限の変更については、地域の皆様に大きなご負担をおかけしてしまうことになることから、従来の環境対策に加えて、深夜早朝対策として寝室への内窓設置や運航機材の制限といった対策をご提案させていただいております。

2016年9月の提案(運航可能時間5:00~1:00)
2016年9月の提案(運航可能時間5:00~1:00)
2017年6月の見直し案(運航可能時間5:00~0:30 )
2017年6月の見直し案(運航可能時間5:00~0:30 )

運用時間について

【C滑走路供用までの当面の間】

A滑走路において、先行して追加の防音工事等の環境対策を講じつつ、3時間の延長案を改め運用時間を1時間延長し、6時から0時までとします。ただし、0時から0時30分までの30分間は弾力的運用※を行います。(2019年10月27日より実施)

【C滑走路供用後】

滑走路別に異なる運用時間を採用する「スライド運用」を導入し、飛行経路下における7時間の静穏時間を確保した上で、空港全体としての運用時間を5時から0時30分までとします。(ただし、0 時30 分から1時までの30 分間は弾力的運用を行います。)

※やむを得ない事由により通常の運航に影響を及ぼすこととなった航空機に限って離着陸が認められる制度

C滑走路供用までの当面の運用

滑走路別に異なる運用時間を採用する「スライド運用」
(C滑走路供用後)

環境面への配慮について

①内窓等の追加防音工事の充実

騒音下世帯における家族全員の安眠を確保するため、以下の対策を行います。

「寝室」であれば現に居住する家族の人数分の部屋に対し内窓を設置するとともに、内窓設置の効果を最大限発揮させるため、壁・天井の防音工事が行われていない場合には、一定の限度額の範囲内で、壁・天井の防音工事を行います。

※2018年10月1日〜 A滑走路側で先行実施、2020年4月1日〜 対策区域を拡大

②深夜早朝における運航機材の制限

運用時間を延長することとなる5時台及び23時以降の時間帯に運航する航空機については、低騒音機※に限定します。

※成田航空機騒音インデックスA(B787、B747-8、A380、A320等)、B(B777、B767等)及びC(B737等)に適合する航空機

効果

①訪日外国人の更なる受入れ

今後増大が見込まれるアジアからの訪日外国人旅行者にとって利便性の高い朝到着、夜出発という旅行ニーズに応えていくことが可能となります。

その結果、訪日外国人旅行者の滞在時間拡大に繋がり、インバウンドの増加に寄与することになります。

訪日外国人旅行者の滞在時間が拡大することで、空港周辺地域における観光需要の喚起、消費の拡大等の効果も期待できます。

②LCCの更なる需要喚起

運航可能時間の延長により、LCCが成田空港に夜間に到着する、あるいは成田と海外を夜間に一往復する等のダイヤ設定が可能となれば、旅行者にとっては、LCCによる内際接続の利便性の向上や更なる需要の喚起につながるため、成田空港の更なる拠点化が期待されます。

③航空貨物の更なる取り込み

首都圏経済を牽引する我が国最大の国際物流空港として更に利便性向上を求めるニーズが高まっています。

夜間飛行制限の変更により貨物輸送の速達性が高まり、更なる航空輸送需要の取り込みが可能となります。

これにより、空港周辺地域における既存物流施設の活性化や新たな産業集積・物流拠点の整備等といったプラスの効果も期待できます。